注文住宅を建てる前に知っておきたい、耐火構造と防火構造の違いとは
耐火構造と防火構造の違いをご存知でしょうか?
注文住宅を建てる前に、ぜひ知っておきましょう。
構造部分もこだわろう
注文住宅を建てる際、間取りや内装デザインにこだわり、おしゃれなお家づくりをしたいと考える人が多いですが、暮らしやすさや機能性も重要なポイントです。どんなにおしゃれでも建物が脆いと自然災害で受ける影響が大きかったり、最先端の設備を取り入れても、建物の構造に使われている素材に機密性、断熱性などがなければ、快適な温度を維持できないなど、暮らしにくいと感じる部分があれば後悔するでしょう。マイホームを建てる際には莫大なお金がかかり、何度も建て替えることができないためできる限り失敗しないように構造部分もこだわってみてはいかがでしょうか。構造における工夫、取り組み方は場合によって違ってきますが、どのような機能性を求めるのかは考えておくと良いかもしれません。
それぞれ注文住宅に求める機能性は異なりますが、建物の構造には火災時の耐火性能の違いに応じ、二つの種類があります。一つは耐火構造、もう一つは防火構造です。どちらも火が関係している名前であるため、意味も混同しがちですがこの二つは全く別物です。それぞれの特徴、違いを知った上で耐火住宅にするか防火を求めるか考えてみてください。
防火構造とは
防火構造は建築基準法に基づいて設計されており、外壁と軒裏に防火性の高い素材を用いた構造のことを言います。この構造は建築基準法2条8号で定められており、防火構造は外壁・軒裏防火構造とも呼ばれることが多いようです。都市部など建物同士の距離が近いエリアは、火災が発生するとすぐ周辺の建物に燃え広がるため、防火性能を用いて延焼を防ぐように対策することはとても大切です。例えば、木造の場合は、その壁に屋外側を鉄網モルタル塗って屋内側には石膏ボードを張るなどの施工が行われます。
このような対策を行うことのメリットは、防火性のある塗料、石膏ボードは比較的安価で済ませながら、被害の拡大を防ぐことができる点や、木造でも問題なく用いることができる点です。しかし、これは内側から発生した火災の対策ではないため、内部から火が上がると短時間で燃える恐れがあるなどのデメリットがあります。内部からの火災も食い止められるというイメージを持っている人が多いかもしれませんが、特徴をしっかり理解した上で取り入れるかどうかを判断する必要があるのです。また、建物を防火構造にしなければならない場合も決まっているため、これからマイホームを建てる人は条件に当てはまるかをしっかりチェックしておくことが重要です。
3つの条件について
1つ目の条件は防火地域の一定の付属建築物です。防火地域というのは火災の危険を防ぐために定められた地域のことを指し、都市計画法において指定されたエリアを言います。指定されることの多いエリアは、駅前や建物が密集している場所、幹線道路沿いです。駅付近は、お店などが多く建物が密集している場所は、一箇所で火災が発生すると広がりやすいため被害が拡大しやすいことがわかりますが、幹線道路沿いは関係ないと思っている人もいるでしょう。しかし、幹線道路も指定エリアに含まれやすいのは、火災が起きた時に消防車などの緊急車両の通行が妨げられないようにするためという理由があります。その指定されたエリアの中で平屋建ての延べ面積が50平方メートル以下の付属建築物を建てる際には、耐火建築物や準耐火建築物にしなくても問題ありませんが、防火構造にしなければならないという決まりが建築基準法61条で定められているのです。
2つ目の条件は、準防火地域の地上1階または2階の建物です。準防火地域とは防火地域の周辺のことを指します。そのエリアにおいて、延べ面積500平方メートル以下の建物は1つ目の条件と同様に耐火建築物や準耐火建築物にしなくても問題ありませんが、防火にしなければなりません。
3つ目の条件は準防火地域の3階建てです。この場合も述べ面積500平方メートル以下であれば耐火建築物や準耐火建築物でなければならないというわけではありませんが、3階建て建築物の技術的基準を満たしていなければなりません。この、3階建て建築物の技術的基準で防火構造にしなければならないという決まりがあります。
耐火構造とは
耐火住宅は住宅金融支援機構が規定している建物の構造のことで、RCと呼ばれるものが多いです。例えば、鉄筋コンクリートやレンガ、鉄鋼モルタルなどが主ですが、木造も耐火構造の一つです。火災時に建物が倒壊したり、周囲への延焼を防ぐような構造を持っていたりする建物のことを耐火住宅と言います。
防火との大きな違いは、内部で火災が発生しても隣の建物へ火が移るのを防ぐことができるという点です。大きな建物の場合、一箇所で火が上がっても耐火構造であれば他の場所にいる人たちが避難できる時間ができます。耐火住宅の屋根には、火の粉によって延焼するのを防ぐ効果や、壁や軒裏も建築基準法に基づいて設計されます。日本では火災が起きてから30分から3時間ほど消火に時間がかかるとされており、その時間内を建物が火に耐えられる耐久性が必要です。
また、壁や天井に石膏ボードを用いて建物の中も一定時間、火を外に出さないという特徴もあります。このような性能があることで火が燃え上がる時間を遅らせ、室内にいる人の避難時間や消火活動の時間を稼いでくれるのです。他にも、他の部屋へ燃え移らないように火の通り道となる壁や天井にファイヤーストップ材を用います。
条件によって異なる所定時間
建物の階数や延床面積などの条件によって耐火建築物にするか準耐火建築物にするかが変わってきますが、大きな建物ほど耐火建築物にしなければなりません。準耐火建築物というのは耐火建築物の条件を満たしていなくても、それに似た性能がある建物ことを指し、火災によって倒壊するのを防ぐことができる時間帯が耐火建築物は最大3時間、準耐火は最大1時間という違いがあります。
また、最上階が2階から4階、5階から14階など部位によっても火災による倒壊を防ぐ時間帯や損傷を生じない所定時間も細かく定められていますが、屋根や階段の階数は関係せずに30分の耐火構造が求められているため注意してください。条件に該当する場合は必ず耐火建築物としなければなりませんが、公共施設や商業施設などの大きな建物が対象となるのが一般的です。
一般的に家庭ではあまり取り入れられない構造ですが、条件に該当しなくても安全なお家に住みたいという場合は検討してみるのも一つの方法と言えるでしょう。場合によっては、性能を満たさなければ住宅ローンが組めないことや、火災保険に入れないケースもあるため、業者に相談しながらお家作りをしてみてはいかがでしょうか。安全なお家づくりだけでなく、建ぺい率を10%上乗せすることができるため、その分、空間にゆとりが生まれます。
さらに、特定行政庁が指定した街区の角の敷地内であれば建ぺい率が10%緩和されることになり、両方の条件を満たしていれば最大20%緩和されるということになるのです。住宅街などお家が密集している場所に防火性能のあるお家が増加すると、エリア全体の安全性も高めることができます。
安心して暮らせるお家を作るために
耐火、防火にはそれぞれ異なる特徴がありますが、火災が起きる可能性は低く、対策にお金をかけるよりは間取りや内装に予算をさきたいと考える人もいるでしょう。しかし、いつ火災が起きるかわかりません。建物を失うだけでなく、人の命に関わることや周囲の人に迷惑をかけます。
また、木造建築の耐火性能を持っているお家は火災保険料が割安になるというメリットもあります。保険料金はそれぞれの住宅で異なりますが、木造は保険料が高い傾向にありH構造とされています。しかし、耐火性能を持っていれば鉄骨造と同じくT構造として契約することができ、料金が安くなるのです。しかし、他の性能を持つ建物と比較すると重量が嵩むため、地盤がしっかりしていなければ補強が必要になるケースもあり、費用が高くなるため注意してください。
防火のメリットは耐火と比較すると費用が安くなることが挙げられます。しかし、内部で火災が起きると短い時間で延焼したり、倒壊したりする恐れがあるのがデメリットです。
このように、二つには違いがありますが、注文住宅を建てる際はいざというときに備えて、それぞれの特徴を理解し慎重に構造部分を考えていくことが大切です。わからなければ注文住宅メーカーに相談しながら機能性を考えていくという方法もあります。信頼できる業者に依頼すると満足度の高いお家を建てることができます。